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銀のくじゃく

 

銀のくじゃく (偕成社文庫)

銀のくじゃく (偕成社文庫)

 

 日本の児童文学者としては独特な作品を残している安房氏の短編集。表題作は、織物に情熱と技能を持ちながら日常品しか織る機会がなかった機織りが、ふしぎな老人に連れられて森の奥の塔でクジャクの旗を織ることになる物語。火の中で出会える不思議な世界の「熊の火」、謎の苦情の手紙の「秋の風鈴」、ミニチュアのストーブが見せてくれる「火影の夢」など、結末はハッピーエンドではないものが多いが、不思議な余韻が残る。小さい子より思春期くらいでこうした作品に惹かれる子がいるのは事実だと思う。