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なしの木の精スカーレル

 

なしの木の精 スカーレル (Best choice)

なしの木の精 スカーレル (Best choice)

 

 ジーモン10歳とソーニャ9歳の兄妹が庭で出会った梨の木の精スカーレル。大人には声も聞こえないし姿も見えない。2人はスカーレルから、病気の木を切らずに直す方法、害虫や害獣のために農薬や殺虫剤、わなを使わない方法を教わって、次々に実践していく。そして、アブラムシ、毛虫、ネズミ、モグラなどを悪者扱いするのは人間の都合で、本当は殺していいものなんて何もない、それぞれ何かの役に立ってみんなつながっているという考え方を学んでいく。新しい家に引っ越すことになった2人と、梨の木に宿るスカーレルに別れの時は来るが、兄妹は植物の言葉を聴く耳を失わず、やがて農業大学で園芸を教えるようになるのだった。
精神科医で忙しい父親や自分の庭は好きなようにすると豪語する隣家のおじさん、終盤大人に近づいたジーモンの言動が、自然の声を聴けなくなった現代の人間の姿を表していて、ソーニャの気持ちで読んでいると寂しい余韻が残ります。   (ふ)