児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

ハメルンの笛ふき

 

ハメルンの笛ふき

ハメルンの笛ふき

 

 筋はよく知られている話ですが、1200年代に実際に子どもが”いなくなった”事実(疫病か?)を元に書かれた詩だということを最近知りました。詩の文章なのでリズムよく物語が入ってきます。でも1ページあたりの文章が多い前半から一転、子どもが笛の音にひかれて続々と列をなしていく様子――幼い子も、赤ちゃんをあやすような大きな子も、とにかく根こそぎ笛吹きについて行ってしまうところは、短い言葉でたたみかけるように画面が進んでいき恐ろしさを感じます。そして本を閉じてもう1度表紙を見たとき、それが子どもたちの行った喜びの国の風景だということ、その美しさにあらためてはっとします。語りの仲間が4年生に語ったところ1人も知っている子がいなかったとのこと。伝承の形でこういう怖さを知っておくのも必要かなと思います。 (ふ)