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落語少年サダキチ

 

忠志は5年生のどうということのない男の子。多少目立つのは爆裂フェイスという変顔くらい。父親は小さな居酒屋をしているが、母親は物心がついた時からいない。ある日、不良に囲まれた酔っ払いじいさんを、その爆裂フェイスで笑わせて助けたところ、そのじいさんが、お礼に落語をきかせてくれた。落語家粋梅と名乗るおじいさんの落語はメチャクチャ面白くて感動! その後のお楽しみ会で、一緒にコンビで漫才をやるはずだった真一が逃げ出してしまい。やもなく一人で、きかせてもらった落語「平林」を必死にやったところ、なんと大成功。次は全校生徒の前でやるようにと言われてまっさおになった。じいさんに、助けを求めようと、粋梅が住んでいると言っていた彦八神社に行って、石碑に座ってでなんとなくけいこを始めたら、江戸時代にタイムスリップしてしまった。同じくらいの年ごろのでっちの古着屋の男の子友吉と出会い、「平林」に出てきた小僧のサダキチを名乗った。とりあえず着物を借りて、一緒にお使い先を探す中で、でっちの暮らしが大変であることを知る。そして粋梅に再会。神社の碑の前で、落語をするとタイムスリップすることを教えてもらい、無事に現代に戻り、全校生徒の前での落語も成功させる。だが、母親の謎、かつて粋梅のところで落語を修行したことがある、という父親の言葉の謎など、まだまだ続くのは間違いなさそう。ちなみに、設定はけっこう雑(いきなり落語をすることになるのもそうだが、さらに全校生徒の前でなど)だが、テンポよく読ませるテクニックがある。作者の経歴を見て納得。すでにキャリアがあるSF作家でした。