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若者のためのまちづくり

 

若者のためのまちづくり (岩波ジュニア新書)

若者のためのまちづくり (岩波ジュニア新書)

 

 若者のことを考えていない、無視しているかのような日本の都市計画に対して、若者自身が声を上げていこう、選挙権のない子どもや若者にやさしいまちづくりこそ将来の日本のために重要なのだからと呼びかける。そんなの高校生に荷が思いのでは・・・と始めは感じたが、そのために役立つ視点を提供しようとお手本にしたい内外の町づくり事例を豊富に紹介し、日本の町も多く登場するので身近に考えることができる。

例えば、歩行者専用道路があることで活気のある商店街(下北沢、旭川の平和通、ブラジルのクリチバ花通り)、家・学校・会社以外のサード・プレイスが充実している町(ドイツのビアハウス)、ゴミ収集車の入れない路地のゴミを集積所まで持ってきたらバスチケットや食料に交換!としたことで環境問題を改善(ブラジルのスラム街)などなど。妖怪がすめる町というテーマの章では、柳田国男の妖怪論や「となりのトトロ」、高尾山の天狗、ムーミンなども登場する。

ただ、「おわりに」で著者も書いているように、今の高校生が町づくりについて自分事として考えているかというと難しい。著者は自身の大学のゼミ生と町へ出て様々に活動しており、大学生くらいになればとも思う。だが、どうせ無理とあきらめを抱かせてしまっているのは、私たち大人の責任。だからこそ大人自身があきらめてはいけない。私も、こんな本があるよと高校生に話してみようと思います。    (は)