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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

デニムさん 気仙沼・オイカワデニムが作る復興のジーンズ

 

 宮城県気仙沼で「デニムさん」と親しみをこめて呼ばれる縫製工場「オイカワデニム」。1981年の呉服店からの転身以来、社長の若くしての病死、世界的経済不況、そして東日本大震災などの困難を乗り越えてきました。下請けと自社ブランドの両輪、ジーンズに6か月無償修理の保証書をつける、水揚げ日本一を誇るメカジキの角を糸に混ぜたメカジキジーンズなど、唯一無二の企画力、地域に根ざした仕事ぶりが光ります。震災直後は、高台にあった工場を民間の避難所として認めてもらい、救援物資や様々な情報の拠点にもなりました。震災後1ヶ月足らずの4月4日に工場を再開する場面からは、「働くこと」こそ人の生きる力なのだと感銘を受けます。高学年向きに震災体験の継承としてすすめてもいいのですが、中高生に「働くこと」の希望を感じてもらえるような紹介ができたらいいなあと思う本です。    (F)