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百まいのドレス

 

百まいのドレス

百まいのドレス

 

 100まいのドレスを持っていると言う貧しい女の子を同級生が無邪気な残酷さでからかってしまい、あとで後悔する物語、という紹介を知っていたために、何だか長いこと手に取るのがためらわれていた作品。実際に読んでみてそのリアルな雰囲気が辛くもあった。
貧しい地区から通ってくる無口でおとなしい女の子ワンダ。ある美しく晴れた9月の朝、セシルの新しくてすてきな赤い服に女の子たちが全員夢中になっておしゃべりをしていた時、つられたように、ワンダが「あたし、うちに、ドレス百まい、持っているの。」といったことから彼女へのからからかいが始まる。クラスでも人気者のかわいいペギーはとりわけおもしろがっていつまでもからかった。ペギーの仲良しのマデラインは、自分の家も豊かでないだけにワンダを気の毒だとも思うが、ペギーにきらわれたり仲間外れにされるのが嫌でいつも同じことをしてしまう。学校でデザイン・コンクールが発表になる日、学校に行った二人は教室中に美しいドレスのデザイン画が貼られているのに驚く、それは100枚、ワンダが描いたものだった。だがワンダは引っ越してしまっていた。ポーランド系の苗字だけで差別されない大都会に行く、というワンダの父親からの手紙を見て、マデラインは激しく悔やみ、ペギーも後悔してなんとか謝りたいと思うが、ワンダはもういない。手紙を送るが、うまく謝罪の言葉をいうこともできなかった。そんな時、学校にワンダからの手紙が届く。みんなに服の絵をあげる、前の学校の方がよかったという手紙です。絵をもらったマデラインは、ドレスを着ている女の子が自分に似ていることに気付き、ワンダが許してくれたと感じる。正直、ここで許してもらえないとつらすぎるが、ワンダが新しい学校でも幸せでないようすなのが心が痛む。だが、この無口な美しいドレスを描ける女の子は、自分をからかった女の子たちを許すことができる女の子でもあることは、救いでもあると感じた。