児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

ネルー 父が子に語る世界史 4 激動の十九世紀

 

父が子に語る世界歴史 4 [新装版]: 激動の十九世紀

父が子に語る世界歴史 4 [新装版]: 激動の十九世紀

 

 フランス革命の勃発からヨーロッパのアジアでの植民地支配を経て20世紀に入るころまでを扱ったこの巻は、現代に近づき緊迫感を増してくる。フランス革命とナポレオン台頭については、詳細を知らなかったので、かなり整理がついた。だが、ネルーはここでナポレオンが無能な親族を取りたててあちこちの王位を与えたことを批判しているが、本人の能力ではなく、血筋だけでホイホイと支配権がもらえるというのが、そもそも王制なのねと感じた。当然、イギリスのインド支配の過程も描かれているが、驚くべきは、イギリスにも貧しい人はいるとして、イギリス人を敵視するのではなく、ガツガツと利益をあさる帝国主義を批判していることだ。製品の輸出国だったインドが、イギリスの工業製品を買わされる国へと転落していくようす、その中で、イギリスが自分たちの手伝いを現地調達するために作られた学校での卒業生が、新しい層を作っていったり、穏健に始まった政治運動が弾圧され先鋭化していくようすは、歴史の発展の必然性をみるようだ。また、中国を襲う列強支配、日本の帝国主義化への憂い、とりあえずは西部進出でおさまっていたアメリカがついに植民地支配にのりだすが、そのやり方がわざわざ国を併合せずに、相手国の富だけを握る経済的帝国主義の手段をフィリピンにとっていくようすをみていると、これは、いつの時代の話? 現代じゃないの?と慄然とした。同時代で中国に現れた孫文を心配し、フィリピンでアメリカと日本が利益衝突をするのではないか?と心配しているが、のちの歴史を考えると、よく予想があたっていることにびっくりしてしまう。その合間に、久々に娘に会えて喜びにあふれた言葉をかけている。ネルーさんを心から尊敬してしまいます。