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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

異次元編 SFショートストーリー傑作セレクション

 

 発表年は古いが、内容は現在の子でも十分に楽しめるSF短篇。長い作品を読むのが苦手な男の子などに薦めてみるといいかも。『次元を駆ける恋』は、恋人を事故で失った男が、彼女と共に幸せに生きられる多元世界を求めてさまよう話。せっかく事故から救った彼女が不治の病に侵されていたりと、一筋縄ではいかないながらもあきらめないようすが魅力。『ケンの行った昏い国』は、ヤクザの抗争で相手を倒したと思ったケンの意外な結末。『潮の匂い』は、子どものころの海の匂いを求めて過去に入り込んでしまった男のはなしだが、ちょっと疑問なのは、現代のお金(つまり未来のお金)が過去で使えるか? でした。『母子像』は筒井康隆の作品だが、筒井康隆の筆力が良くわかる悲哀を帯びた、だけれど社会に抵抗するような作品。『殉教』星新一は、初期作とのことで、ブラックが強く面白い。いずれも、読んだ後で自分の中でその作品のイメージが残るような感じ(いろいろと続きを考えられる)ところが良い。