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たいせつな人へ

 

たいせつな人へ

たいせつな人へ

 

原題はIN THE MOUTH OF THE WOFE。ちょっと感傷的な邦題なので原作の直訳「オオカミの口の中へ」でも良かったかも。なぜなら叔父の実話を元にしているが、反戦平和主義だった叔父が、弟の死をきっかけに軍隊に入り、フランスに潜入してレジスタンスの支援という特殊任務に従事した体験を元にした物語だからだ。戦争は人殺しで加担してはならないという信条をもっていたが、弟の死、ナチス侵攻を前についに軍隊に志願するに至った変化。過酷なレジスタンス支援の実態。親しい仲間の死。そしてクライマックスではついにドイツ軍に捕まり、翌日には処刑の宣告を受ける。それを救うためにクリスティーンが行ったあっと驚く手段が見事!! そしてついに終戦。だが、戦争から平和な世界に戻るために助けてくれた家族の献身。さらに戦後のクリスティーンの悲劇など最後まで興味深いが、この叔父の人生はかなり面白い(アフリカに渡って教育活動をしている)ので、戦争と言う異常な世界から日常を取り戻す難しさや後半生の活躍も掘り下げた作品を追加で書いて欲しいきもする。