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自分の力で肉を獲る 10歳から学ぶ狩猟の世界

 

自分の力で肉を獲る  10歳から学ぶ狩猟の世界

自分の力で肉を獲る 10歳から学ぶ狩猟の世界

 

著者が初めて野生動物と対峙したのは小学4年生のころ。椋鳩十の『孤島の野犬』を読み、おにぎりで野犬を飼いならす方法を近所の野良犬たちに試してみたことだった。その後大学時代のアルバイト先で狩猟の名人に出会い猟師の道へ。本書では、わな猟という手法をわかりやすく解説する。
まず初めにカラーページがあり、狩猟の一連の流れ(獲物のこん跡を探る→わなを仕掛ける→獲物をしとめる→獲物を解体する)が豊富な写真で紹介されるので、本文に入ってからもイメージがしやすい。猟師は「山の名探偵」だと著者は言い、山の中を観察し様々なこん跡から動物の正体や行動を推理していく。足跡や木の幹の傷、草の葉についた泥などから動物の種類や体格(体重)を見定める。慣れてくると毛1本を見るだけでシカかイノシシか判別できるそうだ。そうした推理をもとに”50キロのメスイノシシ”などと狙いを定め調整したわなを仕掛けるのだ。猟期は11月15日から2月15日まで。一猟期でシカ、イノシシ合わせて10頭くらいを獲り約200キロの肉があれば4人家族1年分に足りる。著者は自給自足の分しか捕獲しない。シカ肉のおいしさを広く知ってもらいたいと飲食店に販売したこともあったが、「誰だか知らない他人が食べるための」肉を獲ることにやがて違和感を感じるようになったという。そういえば「カレーライスを一から作る」(2018年2月28日に当ブログで紹介)で学生が似たようなこと言っていた。
この本を読んで狩猟をしたいとまでは思わなくても、命と食について自然や動物と自分はどう向き合っていきたいか、子どもは考えるにちがいない。   (は)