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ドリトル先生と緑のカナリア

 

 シリーズ11巻目。6巻目『ドリトル先生のキャラバン』で「カナリア・オペラ」の主役を務めた雌のカナリア、ピピネラが語る身の上話です。
その半生は予想外に波乱万丈。ある時は宿屋で馬車の到着を報告する係として自作の歌でお客たちを歓迎し、ある時は伯爵のお城で純銀のかごに入れられ夫人をなぐさめる。かと思うと、軍隊で幸運のマスコットとなり行進曲を歌って鼓舞したり、炭鉱で毒ガスの見張り役になったことも。炭鉱視察をきっかけにもらわれたお金持ちのロージーおばあさんの家では「カナリア・オペラ」の相手役の雄カナリア、ツインクと暮らす。そしてこの家に出入りしていた窓ふき屋にもらわれたことが、ピピネラの生涯をさらに波乱に満ちたものにする。ある日突然窓ふき屋が行方不明になり、かごから出たピピネラは初めての野鳥生活を経験。雄のヒワと出会い飛び方や身の守り方、食べ物の取り方を教わり恋もする。しかしほどなく裏切りに合い、海を渡ることを決意。ある無人島の洞穴で窓ふき屋の布を見つけたことから窓ふき屋と暮らした風車小屋に戻ることを決めるも、荒海を渡ることは厳しく沖を行く船の水夫につかまる。ところが、なんとその船内でピピネラは窓ふき屋と再会!実は窓ふき屋は公爵を退いて密かに政治批判を執筆していたことから、風車小屋に戻らなかったあの日捕らえられたのち逃亡し、大海を漂流していたところをピピネラのいる船に助けられたのだった。ようやく一緒に風車小屋へ戻ったが、またしても離れ離れとなる事件が起き、窓ふき屋の捜索と秘密の原稿を取り戻すための大捕り物には、ドリトル先生ほか犬のジップやロンドン・スズメのチープサイドたちが大活躍する。
ピピネラの語りをドリトル先生たち動物家族が聞いている形で進行し、合間にブタのガブガブが「お腹がすいた」と言ったり、しっかり者アヒルのダブダブが「寝る時間ですよ」と促したりするところで気分が変わってユーモラスです。 (P)