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世界のはての少年

 

世界のはての少年

世界のはての少年

 

2018年カーネギー賞受賞作。スコットランドヒルタ島では、毎年夏に近くの島に渡り、海鳥を捕獲するのが恒例だった。9人の少年と大人3人はいつものように島に行く。だが、いつもなら3週間ほどで迎えに来る船が来ない。徐々にみんなの間で不安が広がる中で、感性の強い男の子ユアンが世の終わりが来たのだと言い出す。教会の墓彫り人コル・ケインは、教会に関係していることを鼻にかけ、牧師気取りでふるまい始める。不安なみんなが巻き込まれていく中で、クイリアムは自分があこがれている年上の少女マーディナへの思いを糧に、みんなに物語を語ることで励ます。迎えがこないままで冬が到来、食べ物の欠乏がはじまる。大人であるファリス先生さえ自殺まがいのことを企てようとする。おまけに仲間だと思ってきたジョンが女の子であることが判明し、混乱が起きる。ついに死者も出た。そして9ケ月たってようやく迎えの船が来たが、島には恐ろしい事件が起きていた! 1727年に実際に起こった事件を元にしたサバイバル作品。生き延びなくては、という中で、なぜ迎えが来ないのか? という不安がかきたてられ、最後まで展開に目が離せない。クイリアムが、みんなが気力を無くしていく中で、それぞれに王の称号を与えて、生きようとする姿勢に励まされる。コロナウィルスで閉じ込められている私たちにとっても、このやり方は参考になるかも!