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兄の名は、ジェシカ

 

兄の名は、ジェシカ (アニノナハジェシカ)

兄の名は、ジェシカ (アニノナハジェシカ)

 

サムは4歳年上の兄ジェイソンが大好きだ。政治家のお母さんは現在大臣で、首相候補と言われて忙しいし、お父さんは秘書としてそんなお母さんを支えていてやはり忙しい。いつもそばにいてくれ、難読症のサムを助けてくれたサッカーが得意でカッコよくて自慢の兄だ。なのにある日、ジェイソンは「自分は女性なんだ」と言い出した。サムは大混乱。両親も、一時的な思春期の病として治療できないかと医者に連れていく。サムは兄のせいで「お前も女なんだろう」という執拗な嫌がらせをされ、辛くてたまらなくなり、兄が伸ばしていた髪をこっそり切ってしまった。それで兄が戻ってくれるように思ったのだ。だが、兄はそれをサムがやったとは思わず、家を出て母親とは正反対の自由奔放な叔母の家にいってしまう。折から母に首相に指名されるチャンスが訪れるが、そこで兄がトランスジェンダーであることが政敵から暴露され、大混乱が起きる! イギリスを舞台に、ごくふつうの中学生14歳のサムの視点から、兄の意外な告白へのショックと混乱。だが、それまで大好きだった兄の気持ちへの理解。息子を理解できずに対立するが、それをネタにしたバッシングの中で、逆にもう一度大切なものを見つけていく両親。兄を異常者、原因は母親が仕事をしていたせいと偏見に満ちた攻撃をしてくる社会の姿を描いている。簡単には理解できなかったサムが「兄さんの名はジェシカだ」と言い切るように成長していく姿が、説得力をもって描かれている。自分とは違う人間を排除するのではなく、認め合いたい。