児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

風を切って走りたい!(2020課題図書 小学校高学年の部)

 

堀田健一さんは、ものつくりが好きで、手先が器用。たまたま小学生の息子が、学校で自転車は禁止だと言われた、先生は三輪車なら言いという。というのを聞いて、小学生が乗れるくらい大きくて、踏み込みで進む特別な三輪車を作りました。たまたまそれを見た足の不自由な女性から、これなら自分にも乗れるからぜひ作って欲しいと頼まれる。迷った末に引き受けたことがきっかけで、その後も依頼が来て、ついに体が不自由な人のための特注自転車づくりをするようになった人生を取材して紹介した本。ものづくり、思いやりと読書感想文として書きやすそうな要素が多い。だが、ふと考えてしまった。金銭的には報われずに苦労し、なかなか社会的な評価もされなかった堀田さん。現在も後継者がいないという。現在は、やっと評価もされ、購入補助金も得られるようになったというのに。必要とされるとは言っても、あまりに特殊な需要が商売になるのが難しいということなのだろう。こうした福祉的な仕事は、金銭的には恵まれないことが多い。ひょっとしたら、なぜ人の為になる仕事をしても金銭的に報われないのか(それは、結局、後継者がいなくて消えていくことになる)。それを変えるにはどうしたらいいのか? 間違いなく役立つけれど、大量生産できず、購入者に大きな負担をかけるわけにはいかないものを仕事にはできないのか? という切り口で考えを進めていったら、一味違った(「堀田さんはすごい」だけではない)感想文になるかもしれませんね。