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キャパとゲルダ ふたりの戦場カメラマン(2020課題図書 高校生の部)

 

 伝説の戦場カメラマンともいえるキャパと彼の恋人であったが、それ以上に「コパン」であったゲルダ。キャパをプロデュースして巧みに売り込んだゲルダは、自立して自分の立ち位置を求めた活動的な女性だった。理想を求めて立ち上がったスペイン内戦に飛び込み、労働者たちが政権を取り、女性もズボンをはいて駆け回る開放的なバルセルナに入った二人は興奮する。二人の青春と、理想が爆発したようなスペイン革命が重なるが、フランコ将軍との攻防戦、徐々に内部分裂がおこる革命軍、スペインを援助するようにふるまいながらひそかに利用しようとするスターリンソ連という現場で二人は(そして理想に惹かれて集まった世界中の人々も)悩みを深めていく。実はスペイン内戦についての予備知識はあまりなかったのだが、この悲劇の歴史についても良く分かった。この複雑で残酷な戦場で、二人は独自の写真スタイルを作っていく。最前線に飛び出していく二人。そして、兵士や市民たちの中に共にいて、その日常を切り取る技。だが、単独取材の最終日、ゲルダは戦死する。27歳の誕生日直前だった。あまりに若いと思うが、キャパも40歳そこそこでヴェトナムで戦死している。著者の二人も夫婦で、キャパとゲルダはパートナーとの理想のあり方のお手本でもあったのだろう。スペイン内戦やキャパとゲルダを美化することなく描こうとする姿勢はとても誠実。かなりしっかりした本なので、本を読み慣れていない高校生には難物かもしれないが、くいついていけば全く別な世界が開ける思いがするだろう。