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アーモンド

 

アーモンド

アーモンド

 

 著者のデビュー作で、韓国で第10回チャンビ青少年文学賞受賞作。偏桃体(アーモンドという意味)に異常があって恐怖や感情が理解できないソン・ユンジェが主人公だ。他の人間と同じ反応ができないためにいじめられるユンジュを心配して、母親は普通の人間のふるまい方を懸命に教え、祖母もユンジュをかわいがってくれた。だが、通り魔殺人事件にあり、祖母は殺され母は意識不明になってしまう。母親の古本屋の店の入ったビルのオーナー、ジウ博士が保護者となってくれてユンジュは一人暮らしをしながら学校生活を続けた。そんな折、彼は行方不明になった息子の身代わりをたのまれて、瀕死のその子の母親に面会する。そして実は見つかっていたその息子ゴニが偶然に同じ学校に転校してきた。幼い頃からすさんだ生活を強いられてきたゴニは、みんなに恐れられる少年になっていたが、ユンジュには恐怖という感情が理解できない。激しくつっかかってきたゴニに淡々と対応するユンジュにゴニは、しだいに気抜けし、彼への興味を示し始めた。そのころ、ユンジュはドラと出会う。走ることが大好きで、特に群れはしないけれど孤立しているわけでもない不思議な雰囲気のある少女に、ユンジュは惹きつけられる。だが、学校や父親に反発したゴニは、家を出て行方不明になってしまった。ユンジュはゴニを見つけ出すために動き始める! 感情がない息子を心配する母親。感情が理解できないからこそ、憎しみや偽善も理解できないユンジュ。理解できなくても、母親やシム博士の助言に従ってまじめに自分のできることをしていくユンジュ。見ているうちに、異常なのは誰? という思いにかられてくる。ちょっと都合がよすぎる?という部分がないわけではないが、ユンジュ、ゴニ、ドラのいずれも個性的だが魅力的であることが読者の共感をよんでいるのだろう。