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あたしが乗った列車は進む

 

 もうすぐ13歳の「あたし」は列車に乗っている。カリフォルニア州からイリノイ州に向かって移動しているのだ。お目付け役として鉄道職員のドロシアが「あたし」を見張ってる。読み進めていくと主人公のママは、ドラッグ中毒死んで、おばあちゃんにあずけられ、そのおばあちゃんも死んだためにあったこともない大叔父さんにあずけられるための旅だと徐々にわかってくる。親切な売店のニールや乗客のカルロス。そして乗り合わせたボーイスカウトの一団のテンダーチャンクスとの淡い恋。車中で迎えた13歳の誕生日。早々に持っていたお金を食べ物に使い果たしてしまい、食べ物が買えないが打ち明けられない。思いつきで車内カフェの注文取りでチップを稼いだり、ボーイスカウトたちと賭けトランプをしたりしてしたたかに頑張る。勝ち気で、周りを頼らないはずの「あたし」だが、ニールやカルロス、そしてドロシアさえ自分に心を寄せてくれることに気付いていく。常に不安にさいなまれたママやおばあちゃんとの生活とこれからの未来への不安。だが、自分の力を信じて進もうと決意する。読んでいて特に切なかったのは、「わたし」が食べ物を買うお金が無くなったのに、それをだれにも言えない不安を抱えるところであり救いは、最後にそれをニールに打ち明けるところだった。現在の日本でもそうだが、子どもたちには、いやすべての人が、安心して食べることのできる世の中であって欲しい。