アメリカで原爆投下の正当性を教育された著者が、広島の平和記念資料館に収蔵される被爆者の遺品2万点から14点の声なき声を、詩のような文章でつづる。遺品は広島県倉橋島産の「議員石」にのせて撮影されている。真っ黒にやけためがねは、丸いぼたんと細いひもにしか見えない。1組の軍手は、建物疎開(空襲による延焼を防ぐため家を壊す)の作業をさせられていた中学1年生12歳のもの。必死で家まで帰り着いた後、数日で息を引き取った人たちも多い。色鮮やかに残るワンピースや日記帳などを見ると、戦後まだ75年しかたっていないのだと思わされる。戦後70年を機に放送されたラジオ番組「アーサー・ビナード『探しています』」から出版された戦争体験談『知らなかった、ぼくらの戦争』(2018年8月14日に紹介)も必読です。 (H)