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子どもたちへ、今こそ伝える戦争 子どもの本の作家たち19人の真実

 

 子どもの本の作家19人の戦争体験がありのままに語られている。戦争になったら暮らしはどう変わるか、学校に行けなくなり中学生以上は学徒動員で働かされるなど、子ども自身がどうなるかを実感できる。

「戦争なんだからガマン」と自分に言い聞かせ続けた立原えりかさん。軍隊の全員行動のためにと学校で左利きを矯正された山下明生さん。当時「命は鴻毛(鴻の羽毛)よりも軽い」と教えられたという杉浦範茂さん。

そんな中、森山京さんが心の支えとした石井桃子訳『プー横町にたった家』は戦中の1942年に出版されたこと、戦争批判の替え歌を大声で歌っていた子ども文化を称える田畑精一さんの話は小さな希望。また、かこさとしさんの文章は、高校生の時にお世話になったお医者さんとの別れをユーモアと深い悲しみでつづっている。
中でも迫力があるのは、「戦争賛成」と題された田島征三さんの文章。3歳の時に機銃掃射の弾丸を浴びながら逃げ惑った体験も壮絶だが、どんな時でも「戦争反対」を貫けるか、身近な人の利害が関わってもどうかと突きつける。人間の心や判断の弱さ危うさをわかったうえで、それでも貫ける強さを体験者の言葉から受け継ぎたい。 (は)