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トパーズへの旅

 

 『トパーズの日記』(金の星社)に写真が掲載されているヨシコ・ウチダさんの体験に基づくフィクション。1975年刊の児童書はとても読みやすかった。
1941年末の日米開戦を機に、ルーズベルト大統領は指定地域の住民を強制疎開させる権限を陸軍省に与え、アメリカ西海岸に暮らす11万人の日系人が強制収容された。

その時、主人公のユキは11歳。両親と18歳の兄の4人家族だった。日系一世のためアメリカ国籍を持たない父は、日系企業に勤めているという理由でFBIに連行。午後8時以降の外出禁止、移動範囲の制限、ラジオやカメラの所持禁止など”敵性外国人”に対する締め付けが厳しくなっていく過程から競馬場の馬小屋を利用した仮収容までが丁寧に描かれる。それらの体験は、11歳の子どもの記憶に強く残ったことなのだろう。

一方で、その後の”戦時疎開センター”(強制収容所)での生活を含めて、世代を超えたいいご近所づきあいがあったことがわかり、心が和む。

物語は1年数か月間の収容所生活から解放されるところで終わりハッピーエンドのようだが、その後も続いた日系人の苦労があとがきに解説されている。 (は)