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囚われのアマル

 

囚われのアマル

囚われのアマル

 

 パキスタンの地方のまちで暮らすアマルは12歳の女の子だ。勉強が好きで、学校の先生になることを夢見ている。だけど、母さんに赤ちゃんが産まれ、その5人目も女の子だったことで、母さんはすっかり気力を無くしてしまった。起きられなくなった母さん代わりに家事や妹たちのめんどうをみるためアマルは学校に行けなくなってしまう。さらに市場で車をぶつけられ、車の男があやまるどころかアマルが買ったザクロを取り上げようとしたのでカッとして、ザクロを奪い返して逃げたが、相手が悪かった。大地主カーン氏の息子で残酷な性格で知られていたジュワッドだったのだ。まちの人間は、みんな地主から金を借りていて、アマルの家も例外ではなかったのだ。ジャワッドは、嫌がらせのため借金を返せと言ってきたが、利子で膨れ上がった借金はとても返せない。目的はアマル。借金のカタに、自分の家で働くようにいってきて、両親にはどうしようもなかった。幸いジャワッドの母親、穏やかなナスリーン奥さま付のメイドとなり、直接ひどい目にあわされずには済んだが、その待遇を恨んだ召使仲間のナビラに恨まれ、嫌がらせをうける。そしてナビラもやはり借金のカタに働かされているが、食事代やら生活費を引かれ、借金の返済などできないのだという事実を知らされて呆然とする。そんな中、警官が頻繁に屋敷を訪れるようになった。どうやらジャワッドは賭け事がらみの殺人事件に手を染めたようだ。もし、彼が逮捕されれば自由になれるかもしれないが、事は簡単ではない。このまま一生、ただ働きの召使でいたくないのに! 著者はパキスタンアメリカ人。現代パキスタンに残っている地主に誰も反抗できず、女の子が喜ばれないという過酷な状況の中で聡明な女の子が道を切り開こうとする姿を描いている。七人のうち一人が貧困という日本の子どもたちの中にも、こうしたアマルの姿に励まされる子がいるのではないかと思う。