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サンドラ、またはエスのバラード

 

サンドラ、またはエスのバラード

サンドラ、またはエスのバラード

 

 スウェーデンで2000年にアウグスト賞青少年向け作品部門にノミネートされた作品。主人公サンドラは19歳。恋人のセブが他の女の子といるのを見て衝動的に近くにあったレンガを投げつけてケガを負わせた。起訴はされなかったが、街を出て、学校をやめて老人介護施設へ一人で働きにでかけることになった。その施設の入所者で癖のある老女ユディスに翻弄されるが、徐々に交流を深めていく。サンドラは9歳の時に母親を亡くして現在の養母に引き取られた過去があり、ユディスは娘を失った過去があることが徐々にわかってくる。そしてナチスの影が迫る戦時中、ユダヤ人として家族と離れ、レジスタンスにもかかわりながら恋をしたユディスの過去も知る。セブへの断ち切れない思い。自分のアパートの工事をしているポーランドから不法就労で来て働いている青年マレクとの出会い。そしてサンドラは自分がセブの子どもを身ごもっていることに気付く。若者と老人の交流という題材は良くあるし、サンドラがセブを忘れられない理由やセブの浮気の真相などあいまいなところも気になった。ただ、スウェーデンというあまり日本に紹介されていない国の作品として、その歴史の描写などは知らなかったことを教えられた。