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シェニヤル村のこどもたち

 

シェニヤル村の子どもたち

シェニヤル村の子どもたち

 

 現ロシア連邦チュヴァシ共和国出身の作者が、自分の子ども時代を元に描いた創作。父親が戦争で亡くなったが、母親がしっかり働き貧しいとはいえ子どもたちを守っている、周りの物事から限りなく空想を広げて楽しむマリネの姿が自然に描かれているところが魅力。まだ小学校前でもがちょうの番をしなければならないマリネだが、雲が形を変えるのを見て楽しんだり、美しいボタンを一つ拾っただけで物語が頭の中で生まれる。食いしん坊でいたずらな兄さん、いつでもやさしい隣の家の男の子ワシーリなどさまざまな子どもたちと楽しく過ごす。お母さんのために夕ご飯の準備をしようと奮闘して、ちゃんとそれなりに作ってお母さんにほめられるマリネの姿などを見ていると、彼女と一緒にとてつもない幸せに包まれた感じがする。大事件があるわけではないささやかな暮らしだが、安心して気持ちよく読める。