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花守の話

 

花守の話 (文学の扉)

花守の話 (文学の扉)

  • 作者:柏葉 幸子
  • 発売日: 2009/06/23
  • メディア: 単行本
 

 お父さんが出張中に、突然おかあさんに研修旅行の機会がきた。だが、瞳子はそのタイミングで風邪をひいてしまい、いつもなら当てになるお父さんのおじいちゃんおばあちゃんは海外旅行中。どうしても行かなければならないお母さんがしぶしぶ頼んだのは、自分のおかあさん。だが瞳子は会うのが初めて、訳ありで不仲のようすなのだ。いかにも不愛想なおばあちゃんで、瞳子は少し不安。ところがそんなおばあちゃんに突然夜に電話をかけてきた人がいる。おばあちゃんは呼び出されたようだが、避けるために一緒にホテルに移ろうと言い出した。だが、家をでたとたん無人の車が待ち受けていた。車のナビに導かれ、二人が向かったのは山の中の桜の木。そこには鬼が待ち受けていた。鬼は桜を守る花守だが、いたずらな人間が無理に桜を開花させようとたき火で地面を温めたせいで、桜が咲きかけて困り果てていたのだ。だけど、鬼に頼られるおばあちゃんっていったい何者? なにげない導入から、ごく普通に昔話の世界に移行していく手腕は、さすが柏葉さん。大学で昔話の研究をしていたという、一見冷たい雰囲気で不愛想なおばあちゃんに、ちゃっかりした瞳子が一挙に間を詰めていくテンポがなかなかたのしい。