西鶴など近代文学研究家の著者による、西鶴の原作を加筆した短編集。死んだ父親が大切にしていた刀の思いがけない価値の意味「牛と刀」。狐に化かされて坊主姿になってしまう「狐の四天王」。人形芝居の人形たちが動き出す「真夜中の舞台」。敵討ちの敵を打つはずが、成り行きで父の首を切ることとなり、再度試みて自分も同じ壁の抜け穴から出した首を切られる「ぬけ穴の首」。飼い主の役に立とうと働き、あやまってその赤ん坊を死なせてしまったことを苦にした「お猿の自害」。突然消えた大百姓と似ていることを知り、後釜になろうとした「帰ってきた男のはなし」。当初は努力で頭角をあらわしたのに、しだいに金儲けのために不正に手を染めて金の亡者となって命をおとす「わるだくみ」の7編が収録。個人的には、身代わりがばれたあとも、それを受け入れようとする妻や村人たちの思いがしみじみする「帰ってきた・・」と、成り上がりから破滅へと向かう「わるだくみ」が面白かった。人間の心理を良く分かっている感じが魅力。