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実験犬シロのねがい

 

実験犬シロのねがい―捨てないで!傷つけないで!殺さないで! (ドキュメンタル童話シリーズ犬編)

実験犬シロのねがい―捨てないで!傷つけないで!殺さないで! (ドキュメンタル童話シリーズ犬編)

  • 作者:井上 夕香
  • 出版社/メーカー: ハート出版
  • 発売日: 2001/03/09
  • メディア: 単行本
 

これは、ノンフィクションだと思われるし重要なテーマではあると思うが、あまりにも記述があいまいなので、子どもたちにもっと情報を与えて欲しいと思った。安易に捨てられて殺処分されるペットや残酷な動物実験は許されない。だけれど、冒頭の卓也くんが保健所から犬を取り返すエピソードにしても、やはりこの後、家で犬に避妊手術をしたのか? あげた犬にも避妊手術をしたのか?と気になった。最初にきちんと犬を飼う覚悟について書いてあるのだから、それに沿ってきちんと飼育する日常をおくる卓也くんの姿を書いてもらうと、犬を飼っていない子どもたちは、「項目」としてだけではなく、具体的に何が大変か理解しやすいだろうし、より現実的に犬を飼う選択について考えられるだろう。また、実験動物で問題を起こした施設名や、残酷な動物実験をした企業名が書いてないが、これはなにか事情が? ノンフィクションなら、日時場所を淡々と記述することで「本当にあったことなのだ」と子どもたちは納得してくれるだろう。動物実験が、動物に負荷をかけるのは事実だが、「シャンプーの原液をうさぎの目玉にかけ続けて目を溶かす」というようなグロテスクな実験を描写し、最後にでも「世界のあちこちで、動物実験以外の方法をすすめているよ」との趣旨書かれているが、これでは子どもは傍観者のよう。ひょっとすると、自分がシャンプーの新製品を欲しがることが動物実験に加担したかも、と自分の生活を見直して、誰かがやってくれるから安心だねみたいにならないようにしたい。また、この本では研究者は、動物をいじめて楽しんでいるサディストのように描かれているが、さすがにそれもどうかと思う。一部にそうした人や、過去にそうした意識があるにしても研究者の中にも良心的な方もいるはず。愛護団体が正義で研究者が悪者軍団みたいに描くよりは、双方の努力でよりよくなる未来を見つけて欲しい。