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イワンの馬鹿

 

イワンの馬鹿

イワンの馬鹿

 

ある裕福な百姓に3人の息子と1人の娘がいた。軍人のセミヨンと商人のタラスと馬鹿のイワンに、耳の聞こえない妹だ。ある日、この息子たちに目を付けた老悪魔と3匹の小悪魔は、あの手この手を仕組んで兄弟仲を裂こうとする。2人の兄をたぶらかすのは簡単だった。しかしイワンだけは、金や兵力の誘惑は全く意味をなさず、神を信じ愚直に働き続けた結果、イワンのもとに人々は集まり幸せに暮らすのだった。
トルストイ文学翻訳家である北御門二郎の孫、小宮由による新訳。訳者あとがきに、祖父の訳があるのに自分が翻訳する意義として「子どもの本専門の翻訳家である」ことを挙げている。文章はすっきりしているし、登場人物の言葉遣いから関係性がわかりやすい。装丁は大人趣味ですが、子どもたちに読んであげるなどしてぜひ届けたいと思いました。
巻末にトルストイ、挿絵のフィッシャーについての解説や北御門二郎の『イワンの馬鹿』に関する文献抜粋も充実。 (P)