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大造じいさんとがん

 

大造じいさんとガン (偕成社文庫3062)

大造じいさんとガン (偕成社文庫3062)

  • 作者:椋 鳩十
  • 発売日: 1978/03/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

小学校5年生のほとんどの国語教科書で収録されている。物語は猟師の大造じいさんと、残雪という賢いがんのリーダーの知恵比べ。警戒心が強く、うまく仲間を逃がす残雪のせいで、大造じいさんは不猟に悩まされている。罠をはるが、最初に一羽捕まえただけで後は残雪の知恵のせいでことごとく失敗する。3年目、最初に捕まえたがんをおとりにして今度こそがんを捕まえようとする。だが、はやぶさが群れを襲った。はやぶさは、人間に飼われているうちに野生を失って遅れたおとりのがんを狙う。だが残雪が仲間を助けようと攻撃をかける。チャンス到来! しかし大造じいさんは、結局撃てず、地上に落ちた二羽に駆け寄り残雪を助けた。手当をした後翌年の春、残雪を仲間のもとに返してやる。次も堂々と戦おうと、声をかけて・・・。と、まぁなるほどスポーツマンシップ的、教科書的にまとめているけれど正直私は首を傾げた、宮沢賢治の「なめとこ山の熊」と比べてみると、この猟師の小十郎は一家七人を養えるだけの畑がなく、熊に申し訳なく思いつつも撃ち殺さなくてはならない。しかも優秀な猟師であるのに、せっかくとった熊の毛皮や肝は、まちで買いたたかれ、さいごには熊に殺されるが小十郎を殺すつもりではなかったと山中の熊が小十郎を悼む。こういうのがフェアじゃないのかしらん? 大造じいさんは、がんを捕まえる必然性があったのだろうけどそれが書かれていないので、狩りが失敗しても大造じいさんは悔しいだけ!? それに対して狩りの成功はがんにとっては命がけなんだけど・・・と思ってしまったのだ。これはスポーツハンティングなのか? だとしたら、残雪や、今後とも絶対に大造じいさんになぞつかまらないでいてくれよ!