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人形の家

 

人形の家 (岩波少年文庫)

人形の家 (岩波少年文庫)

 

 人形の家に住む人形たちは寄せ集めの家族。丈夫な木製の一文人形トチー、顔がせともののプランタガネットさん、奥さんのことりさんはセルロイド、弟のりんごちゃんは手触りの暖かいフラシ天、そして犬のかがりはかがり針に毛糸を巻きつけたもの。トチーは、今の持ち主エミリー、シャーロット姉妹のひいおばあさんの代からその手元にいる。ある日展覧会に出品され女王の目に留まると、同じく展示されていた元同居人のマーチペーンのねたみを買う。マーチペーンは本物の黄色い毛、動く目玉ををもち上品なドレスを身につけていたから。エミリーたちの元へ送られてきたマーチペーンは、プランタガネットさん一家をバカにする。りんごちゃんを手なずけて悪だくみをするも、ことりさんが間一髪身代わりとなってろうそくの火に飛びこんでしまう。まもなく、マーチペーンは博物館に展示されることになり大得意で去っていく。プランタガネット家は平穏を取り戻すが、ことりさんはもうかえらない。トチーとプランタガネットさんは、自分の信念に添って亡くなったことりさんと自分たちの幸せについて語り合う。
読まず嫌いの1冊でした。表紙が子ども心に甘くかわいらしい物語を連想させ手に取らずにいました。でも実際は人の心理をえぐり出す深い内容。古く安くても強くて良いものや、でも古いから美しいのではないこと、人の願いや幸せとはを考えさせられます。中高生に読んでもらいたいです。  (P)