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青矢号 おもちゃの夜行列車

 

青矢号―おもちゃの夜行列車 (岩波少年文庫)

青矢号―おもちゃの夜行列車 (岩波少年文庫)

 

 イタリアでは、サンタクロースではなくベファーナという魔女が子どもたちにプレゼントを届けてくれるといわれています。この本のベファーナはおもちゃ屋をやっていて、お父さんお母さんから支払いをしてもらっておもちゃを届けています。なにしろ魔女だって食べていかなきゃなりませんからね。なのでフランチェスコはベファーナに手紙は書いたのにプレゼントがもらえませんでした。本当は電気機関車が欲しかったのに。もらえないおもちゃを毎日見にくるフランチェスコを見るとおもちゃたちも悲しくなってきます。でもいつもは目立たない子犬のおもちゃコインが、いいことを思いつきました。こっそりおもちゃ屋を抜け出して、フランチェスコの家にいってあげようというのです。機関車の青矢号、帆船の片ヒゲ船長(半分しかヒゲが描いてないのです)、インディアンの銀バネ大将たちの指揮で、みんなはこっそり抜け出します。折から雪が降り、途中で出会う貧しい子どもや目をさまさないおばあさんのところに、一人、また一人とおもちゃたちは残ります。水たまりにはブロックセットの職人たちが橋をかけ、みんなは苦労して先へ先へと進んだのに、なんということでしょう。やっとたどりついたフランチェスコの家はからっぽでした! 個性あるおもちゃたちが力を合わせて、次々と振りかかるトラブルを越えていくようすがテンポ良く描かれている。そして最後に意外なハッピーエンドも素敵。1954年に書かれたという古さを感じさせないユーモラスな文章がとても魅力でおすすめ。