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天邪鬼な皇子と唐の黒猫

 

天邪鬼な皇子と唐の黒猫 (TEENS’ ENTERTAINMENT)

天邪鬼な皇子と唐の黒猫 (TEENS’ ENTERTAINMENT)

 

中国で『覇王』とよばれ、猫の王としてのんきに暮らしていた黒猫のおれさまは、人間に捉えられて日本に送られた。天皇に献上され、天皇から息子の定省(さだみ)に預けられる。長年貧乏暮らしをしていたのに天皇になった父子であり、定省もまじめだ。だが、権力を握ろうとする藤原基経の暗躍で定省は気が休まらない。クロと呼ばれるようになった黒猫のおれさまも、右京と左京のネコたちの縄張り争いに巻き込まれてしまう。そのうえ人語がわかり話せるクロは、成り行きで人間の政争にもかかわることになる。強いが権力欲がなく筋を通すクロのキャラや、きまじめな定省とも魅力的で、さらにクロがどうやら項羽の生まれ変わり?と史記の世界を絡ませるところも面白い。ただ、クロの設定が中国から来ただけに、人語というだけでなく中国語・日本語という言語差を理解できたの? が素朴な疑問。モデルは光孝天皇宇多天皇だが、作品中ではこの名前で出てこないこともあり、歴史小説というより、ちょっとファンタジー系の興味で読まれて楽しまれそう。