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天の鹿

 

天の鹿 (福音館文庫 物語)

天の鹿 (福音館文庫 物語)

  • 作者:安房直子
  • 発売日: 2011/01/25
  • メディア: 単行本
 

 漁師の清十は鹿撃ちの名手だった。巧みな鹿笛で、いつもみごとな鹿をおびき寄せてとらえる。ところがある日、不思議な鹿が自分から近寄ってきて、清十を山奥の不思議な市に連れて行ってくれる。買えるものはたった一つ。清十は3人の娘を思うが、結局紫水晶の首飾りを買った。家に帰り、その不思議な体験を話すと、たえ、あや、みゆきの3人の娘たちは自分たちも行ってみたいと言いう。すると長女のたえの前に鹿があらわれ、たえは美しい花模様をちりばめた紺の絹反物を買うが、帰り道で模様の花はこぼれ、ただの紺色になった。次女あやも鹿に連れられて行くが、闇が恐ろしくランプを買うものの帰り道でランプを壊してしまう。そして3番目のみゆきにも鹿があらわれた時に彼女が望んだものは? という昔話風なファンタジー。読んでいるうちに昔、この鹿がこの世のものではないこと、娘が病気になった時に、この鹿の肝で娘を治したらしいことがわかる。だが、どのむすめだったかは清十は忘れているという設定だ。山奥の市の美しい品々ややまぶどうのお酒など個々のイメージはとても美しいが、その分、とくに最初の紫水晶はなぜそれが必要だったの? というような昔話だったらある必然性がイメージに流れてしまっている感じで、だからこそ好きな子と、そこにうまく乗れない子と分かれるかも。私は後者? 必然性を求めてしまった。