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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

ヒロシマ、ナガサキ、フクシマ:原子力を受け入れた日本

 

日本は「五回も被ばくをしている」。1945年広島、長崎への原爆投下、1954年第五福竜丸、1999年茨城県東海村での臨界事故、そして2011年福島第一原発の事故。東海村の事故をきっかけに原子力や原爆について取材を始め、12年間考えてきたことをまとめたのが本書です。資本主義と社会主義の対立や、核兵器開発の歴史を丁寧にひもといていきます。被爆国日本の国民が原子力の”平和利用”を受け入れていく過程は、戦争を正当化していく過程と同じに思えます。情報操作、思想統制、煽動。人の命よりも国益が優先されました。必要なのは「対立」ではなく「対話」。核エネルギーを持ってしまった人間の欲望を制御するために核に関する「倫理」をつくることが日本の役割と結ばれています。十分、大人だった私でさえ10年まえはうまく消化できなかった内容。でもわからなくても、高校生には読んでみてほしいと思います。 (は)