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エイドリアンはぜったいウソをついている

 エイプリルフールにちなんで、嘘がテーマの本を!

エイドリアンはぜったいウソをついている
 

 エイドリアンはぼんやりした男の子、そして「うちには馬がいるんだよ」という。みんなふぅん、と流しているけれど私は気になる。こんな街中に馬なんているはずない! 馬を飼うにはお金がとてもいるのに、エイドリアンは絶対にお金持ちじゃない。いつものように馬の話をするエイドリアンにあたしはつい「ウソだよ」と言っちゃった。家でそれを言ったらママはいつもと違う犬の散歩コースでを行く。そしたらエイドリアンの家があった。とても小さくてもちろん馬なんていない。でも、なんだかそれを言えない。エイドリアンが投げてくれたボールを返し「馬は遠くにいるんでしょ」と言いながら、馬がエイドリアンの心の中にいるのだ、と気づくという物語。絵本だが、ページ数があるので、よみきかせは大変そう。子どもの気持ちでは、嘘はいけないというのは大きいのでエイドリアンの言うことに反感を持つ女の子の気持ちがよくわかると思う。そしてエイドリアンに向かって「うそつき」というこの子は、ひょっとすると「ふぅん」と聞き流している子より、エイドリアンに向かい合っているのかも、とも思う。エイドリアンの心の中の馬を認めたこの心の動きが、貧乏でかわいそうだから同情したのではなく、本当にエイドリアンの豊かな想像力に共感したのだとまでは描写しきれてないような気がするのが残念。