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女の子はどう生きるか 教えて、上野先生! (岩波ジュニア新書)

 本日は東大入学式とか、2019年は、この方の式辞が話題となりました。

 「理系研究者は男子が目指すもの?!」「専業主婦に憧れます!」「女の子って損?!」「これって逆差別では?」等々、いろいろな質問に答える形で女の子の生き方について語っているのだが、きわめて冷静。例えば「専業主婦になりたい」という子に対し、専業主婦を養える男性の年収やその結婚が破綻した場合の現状などを淡々と説明。こうすべき! ではなくて、情報を整理して自分の頭で検討したらどうなるかな? と語りかけてくる感じが読んでいても気持ちいい。これまでそうだった、という圧力を少しづつ跳ね返して歴史が変わってきたことを踏まえつつ、例えば女性がパートで扶養の範囲内で仕事をすると得をするのは誰?→家事に支障のない範囲で仕事をするならという夫と、社会保険料を払わなくていい企業では! など、社会全体の仕組みにも目を向けさせてくれる。それにしても国連から男女平等の観点から、夫婦別姓を可能にするよう国連から勧告されていたという事実を、恥ずかしながら私はこの本で初めて知りました。話題となった2019年度東京大学学部入学式祝辞も収録。男性と同じことを目指すのではなく、これまで子どもや高齢者など弱者と寄り添う立場だったことを活かして、みんなが生きやすい世界を創ろうという提言が魅力的です。