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キリン解剖記

 

キリン解剖記

キリン解剖記

 

 児童書として出版された本ではないが、これは中高生にオススメかつ、読みやすい本。なにより著者のキリン愛がすごい。どうせなら好きなことを仕事にしよう、そうだキリンが好きだった。でもキリンの研究ってどうしたらいいのかな? そんな風にスタートする大学1年。そんな彼女を否定せず、アドバイスをしてくれるまわりの先生たち。そしてキリンの解剖があるよ、と誘ってもらったところから運命がスタートする。教科書と首っぴきになっても、何の筋肉か全然わからず、せっかく解剖させてもらったのに見ているものが理解できなくて呆然! 2頭目の解剖で、まず自分に見える筋肉がどういうものかを観察することが大事だと教えてもらい開眼。キリンのことを知るために何度も解剖にチャレンジしながら、首の骨の構造の謎にチャレンジしていく過程はドキドキ。彼女は東大女子(上野千鶴子さんが、全体で2割しかいない教えてくれた)だが、まったく気負いがない自然体。
あとがきで博物館に根ずく「3つの無」なんと無目的、無制限、無計画という理念を紹介しているが、今は無意味に見えるものを100年後誰かが必要になるかもしれないことを忘れずに真剣に標本づくりに取り組むという姿勢が魅力的。とりあえず目先のことや効率だけで空回りしないもっと大きな世界を提示してくれ、夢がふくらみ幸せな気持ちになれる。