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彩雲国物語 はじまりの風は紅く

 

 身分は高いが貧乏な姫、紅秀麗。広大な屋敷こそあるが、かえって維持費が大変。父は府庫=図書室の管理の仕事に就いているが、給与は低く本を読んでいるだけで生活能力はゼロ。たまたま身寄りがなくてひきとって育てた静蘭が兵士として働いた給金と、秀麗が寺子屋で教えたり、宴会の配膳バイトでしのいでいる。そこに後宮に入ってほしいという要請が舞い込んできた。激しい政変の後に生き残ったのは、本来なら王位につくはずではなかった第5王子。これがぼんやりしてて使えないのに業を煮やした宰相たちが、王は男色家だから心配なし。生れだけは良いので教養と礼儀が完璧な秀麗なら教育係としてうってつけだというのだ。500両の金に目がくらみ、後宮に入ったが、そもそも皇帝は来ない。たまたま父のところにお茶とお饅頭を差し入れに行ったところ、美形だがぼんやりした男とであった。偽名を名乗る男に、秀麗はかつてこの国が権力争いで荒れたときに民が飢え、自分も必死で働いたが限界があったこと、だから皇帝にきちんと国を治めてもらいたいことを伝える。そう、彼こそ皇帝劉輝。かくして皇帝が少しづつ変わり始める。王子としては軽んじられ、兄王からも虐待されていたが、しっかりとした教育を受けた彼には素養があった。とはいえ世事に疎く、言動は微妙! そしてその陰では老年の宰相たちの思惑も入り乱れ陰謀が渦巻いていた! というわけでしっかりものヒロインと美形で浮世離れしたヒーロー。二人を取り巻く個性あふれる人間模様、となる。秀麗は実は官吏になりたいが、そもそも女性には試験をうけることすら認められていないという設定は、ちょっと自立したい女の子の心を動かしそうです。