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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

完 子どもへのまなざし

 

完 子どもへのまなざし (福音館の単行本)

完 子どもへのまなざし (福音館の単行本)

 

 やさしく語りかけるように、私たちに子どもをどのように受け止めていけば良いのかを伝えてくれるシリーズ3冊目。特に、この巻では発達障害について詳しく扱っている。個人主義の中で子育てがうまくいかなくなっている現状を述べる中で、その原因が子どもがありのままに受容されなくなっていること。親の「期待」とは、逆にいえば「現状ではまだダメ」と言っていることではないかという指摘は心に刺さる。前2作でも書いていた繰り返しともいえるが、大人の都合ではなく、子どもがしたいことを受け止め、それを楽しめ喜べると育児がうまくまわっていくが、今、それができない親(自分の思い通りにならない子が受け入れられない)が多いことで、親子共に辛くなっていることを指摘している。著者の体験として、目の前で子どもどうしのいじめを見てしまった時のことを書いているのだが「おじさん見ちゃった」と、声をかけたところ「ごめんね」とあやまり、やられた方も「うん」と言ったので、「あやまったのえらいね」とあやまった子に言い、「だけど、許してあげたあなたは、もっとえらいね」といって収まったというエピソードにはドキリとした。上から叱るのではなく、子どもたち自身に解決させることがなければ繰り返しが起きるだろう。また、紹介している児童養護施設の職員の方が、子どもにちょっとした用事を頼み、やってもらうと「ありがとう」とはっきり褒める。また、少しでもなにかあれば「ごめんなさい」ときちんとその子に謝る、それを繰り返さないと「ありがとう」「ごめんなさい」という言葉が出る子にならない、まず自分がしてもらえないことはできないのだということ、大人はつい忘れている気がする。また、発達障害自閉症スペクトラムの子の養育について、その子の違いを直視してその子がわかるように進めていけば、きちんと成長していけるが、「がんばればできる。」「みんなといっしょにやろう」という熱心な指導が、逆にその子を混乱させ、追い込んでしまうということは理解が広まらないといけないと感じた。一度にひとつづつを整理して視覚化して提示する、相手に合わせるように注意して対応すれば、素直にまじめに高い能力が発揮できるという具体的なノウハウは、実際にそうした子と会ったときに役立てられるようにしたい。さいごに、小学校の時の優しかった先生や、苦労した母の思い出を付している。こうした優しさを注がれて、この佐々木先生の姿が、形作られたのでしょうね。