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昔話と子どもの空想

 

 人格形成における空想の意味:小川捷之著 は、1980年発表のものだが、内面に何かを蓄える余裕がなくなり、そのコントロールができなくなっているという問題を取り上げ、「何かが欲しい」という欲求についても、その欲しているものを本当に欲しいのか、それともそれに托した何かなのかを見つめる必要があると述べている。現在はこうした状況が悪化しているのではないだろうか?  また、昔話を繰り返し聞くことで、昔話の中の困難な課題に立ち向かう心を育てていると述べているが、こうした繰り返しと向き合う余裕も無くなっているかもしれない。/昔話と子どもの空想:シャルロッテ・ビューラー著は1918年に発表された先駆的な内容。昔話の語りの特徴が、子どもにとってとても理解しやすいことを具体例をあげて述べているが、「昔話はまた、イメージの動きのメカニズムを知り、それを活発にする練習の場でもある。」として変身や魔法を取り上げているが、まさしくイメージする力を育ててくれるのが昔話。/ 昔話における〝先取り”の様式 子どもの文学としての昔話:松岡享子著は、このビューラーの論文を踏まえ、実際に語りを行っているときに、子どもたちが積極的に物語に入っていく様子とその理由を教えてくれる。いずれも長いものではないが、趣旨が明快でわかりやすく、とても参考になった。