児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

”グリムおばさん”とよばれてーメルヒェンを語りつづけた日々

 

ルジュモンさんは昔話を聞いて育ったのではなく、原典を覚えて「一字一句、忠実に語る」語り手です。1944~1960年、グリムを中心にまさに「語りつづけた日々」を淡々と日記のようにつづっていますが、語った場や相手が壮絶。

普通イメージする小中学校の子どもたちのほか、野戦病院の兵士たち、少年刑務所、心のバランスを崩した女性たちのいる施設、大きな手術直前の少年など。

傷病兵は「(グリムのおかげで)正気にもどった。また人間にもどれた」と言い、仕事で死ぬほど疲れた母親は元気に足どり軽くなり、「メルヒェンがもっともっと語られたなら、私たちの仕事はもっと少なくなる」と校医に言わしめる。

昔話や人の声、語りにこれほどの力があるなんて!! (は)