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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

絵本画家 赤羽末吉

 

こんな伝記物語は初めてです。赤羽末吉の三男の妻である著者が築いた、「父」「母」(どちらも義の字をつけずに書かれている)にかわいがられ、心おきなく頼られ、「ただの爺さんではない」と書けるような関係性に、一緒についていきながら読むうちに、最期亡くなるまでの場面は「ああ、いなくなってしまう」と、著者とともに涙が出ました。
赤羽末吉自身の文章を中心に多くの参考文献からの引用と、寝食を共にした経験とから、緻密な作品考察がなされています。その人生は養父とうまくいかなかった少年時代、満州で結婚し家族での暮らし、戦後の引き揚げ、幾多の困難はあったけれど、数々の出会いに恵まれていたこと。絵本づくりには子どもの力を信じ、子どものものだからこそ決して「嘘をつかずに」取り組んだ姿勢。そのおかげで今、こんなに楽しい、恐い、あたたかい、哀しい、美しい・・・絵本にふれられることを、心からありがたく思います。  (は)