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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

カラスのいいぶん 人と生きることをえらんだ鳥(2021年課題図書 小学校中学年)

 

 著者はカラスについての専門家ではないが、生物・環境など自然科学系の著作がある。内容は、著者が実際にカラスに頭の上に糞を落とされたり、生協で購入し玄関先の箱に置いた卵を盗まれたりという体験をしたことをきっかけに、当初は憤っていたけれども、徐々に興味を抱くようになり、カラスの生態を観察したり調べたりしたことをエッセイ風に書いた本。カラスの行動の意外性がとても面白く、この本を読んでカラスに興味を持って観察を始める子が出るのではないかと思った。読書感想文を書くとしたら、実際の自分の観察体験をからめるとか、鳥を飼っている子なら自分の飼っている鳥と、この本で描かれているカラスの行動を比較するとかをネタにすると書きやすそう。ただ、残念なのは観察が個人的な体験の範囲内なのでちょっと物足りなかった。最後は、家を引っ越したせいでそれまで付き合いがあったクロスケと別れてしまって終わり、という終わり方。興味がでて、運よく交流ができ、でも縁が切れちゃった・・・的な展開が残念。カラスの生態についての部分が専門家や関係者とも交流して厚みがもう少し出たらよりおもしろかったのでは? 小学校中級向けで4類ではなく、エッセイと位置付ければこれで良いのかもですが。