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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

失われた世界への時間旅行 冒険考古学

 

 中学校1年生の加藤隼人がスマホで「石器時代への招待」というサイトを偶然見つけてアクセスしたら過去にタイムトラベル体験をした。1回目は4万年前、2回目は1万年前、3回目は5000年前、4回目は3000年前。それぞれの過去の世界で、いろいろな家族に受け入れてもらい、友だちができるパートと、現代で実際に発掘を手伝わせてもらうパートが交互になっている。著者は先史時代の考古学者。なまじ著者が考古学者なので、この内容は最新の考古学研究をふまえたものなのか? それともまだ考古学会では認められていないこの著者の仮説なのか? と考えてしまった。小説なのでどちらでもかまわないのだろうが、SF作家ではなく専門家の著作なので、あとがきにでも一言書いて欲しかった気がする。もっとも、書いてないこと自体が、これは著者の個人の仮説だということだろうか? タイムトラベルものといえそうだけど、それにしてはちょっと安易(ゲームサイトから行けて、戻るを押せば簡単に戻れる)。また、ポケットに入れたものは過去に持っていけるようなので、私だったら、それなりに準備して過去に持っていくものを考える。また、何日も過去で暮らしているのに生活感がなさすぎ(服の着替えは? 魚を食べたりしているけれど、塩を振って焼いているのか? 布団がないなどの不自由さの辛さも特に書いてない)。思わず、私だったら行くときは夜具で使えそうなダウンや、着替えを重ね着にし、塩などどの時代でも希少価値がありそうなものをポケットに入れて行くけどなぁ~などと思いました。無理にタイムトラベルさせずに、現代と過去の少年の生き方を対比して書いても良かったかも。ちょっと中途半端さを感じてしまいました。