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シカの童女

 

ある夜のこと、山でシカの見守る赤ん坊をひろった北の山の仙人。かわいい女の子に育ったその子は一言も口をきかない。ある日、いろりの火だねが消えてしまい、南の山の仙人のところへ使いに出す。険しい山道に女の子の足からは血が流れるが、不思議とその足跡にハスの花が咲いた。驚いた南の山の仙人は、火だねを分ける代わりに家のまわりを歩いてもらうとそこは美しいハスで満たされた。シカ狩りでそこを通りかかった若とのさまは、ハスの花のわけを聞いて北の山の仙人をたずねる。女の子をひとめで気に入り館へ連れて帰るが、若とのさまがシカ狩りに行ったある日、女の子は姿を消し、ハスのつぼみ1輪がのこされる。そしてその日、北の仙人のもとへ現れた女の子は、シカの姿となって林へと消えた。
赤羽末吉の描く童女は意志の強い眼差しをしていますが、若とのさまの館の池一面に広がるハスの葉に座っているときは無邪気にも見えて不思議です。 (は)