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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

子どもの本がつなぐ希望の世界ーイェラ・レップマンの平和への願い

 

2014年に行われた日本国際児童図書評議会JBBY)40周年の展示内容をベースに貴重な講演録や寄稿で構成。『子どもの本は世界の架け橋』でもやもやしていた部分が、本書ですっきりしました。

眞壁伍郎氏がまとめたレップマンの波乱の全人生。「世界の架け橋」にはない写真資料(図書展を見るレップマンとアメリカ占領軍、本を読みふける子どもたち)から、レップマンのしたことは現実だと実感できます。国際アンデルセン賞受賞の上橋菜穂子さんとデイヴィッド・アーモンドさん(イギリス)の文章からは、物語を書くことに子どもの頃の体験が強く影響していることを知り、人生の中で関わってきた多くの人たちの存在や、それによって育まれる言葉や想像力に、私たちは本を通して感動するのだと気づきます。

ほかに、ミュンヘン国際児童図書館長による施設、活動紹介、IBBY国際理事などを務めた末盛千枝子氏による「3.11絵本プロジェクトいわて」の活動など。IBBY/JBBY元会長の島多代氏が、誰もが個人で世界中から情報を入手できる時代におけるJBBYの役割を問うていて、レップマンさんのように図書館や本の存在意義を説得できる言葉をもちたいと思いました。 (は)