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ほの暗い永久から出でて 生と死を巡る対話

 

ほの暗い永久から出でて 生と死を巡る対話

ほの暗い永久から出でて 生と死を巡る対話

 

母親が癌に罹り、母の死をリアルに考える事態に直面した上橋氏と、偶然その母の治療に参与してもらうこととなった津田篤太郎氏(聖路加病院医師)との往復書簡。命と死をめぐる深い考察が魅力。生涯を蓑の中から出ずに終わるミノムシの雌の一生、病気が治るとしても死から逃れられないということ、尊厳をもって扱われることで人が変わるということなどが語られる。とくにAIと人間の認識の仕方の違い、人間が死を知っているからこそ、突然違った生き方へと変わりうることなど興味深い。上橋氏のファンなら中学生位からでも手を出しそうだし、感銘も受けそうだが、死を迫ったものとして感じるこの感覚は、人生の後半戦をおくっている人間の方が大きいかともおもった。