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ケティのはるかな旅

 

時は1780年アメリカ開拓時代、白人とネイティブ・アメリカンとの抗争(侵略)、女性は夫や男性に従わざるをえなかった時代背景。
モラビア教の修道僧が営む宿屋で働くケティの元へ、兄だと名のる男が訪ねてくる。14年前ケティがまだ2歳の時に家を出た兄アンソン。仲間と共に川を下り西の土地へ移住するから一緒について来いと言う。ケティはすでにほかの家族を失っており、保護者となる兄に従い平底船での旅が始まる。

道連れは3家族6人の子どもたち。もう子どもではないが1人前の女性でもないケティは、子どもたちに文字を教える先生として自分の立場をつくっていくが、兄たちのインディアンへの敵意、それが荒野に生きる法だという主張と衝突する。モラビア教の町では同じ人間として接していたからだ。

ケティの心の支えは、旅立ちの前にシスターがくれた2つの教え―「すべての人を愛しいたわる人としてそこにいなさい」「すべての生命を敬い敬虔でありなさい」。インディアンの襲撃、バッファローの群れ、仲間の船での天然痘、船内で生まれた赤ん坊の死・・・幾多の危機や困難、悲しみの中、ケティは荒野のおきても理解するようになっていく。そして土地の調査を行っていたジョージと出会って互いに思い合うようになり、2人で共に歩む決意をする。
ケティは始め、妻に対する兄の態度や扱いを愛情がないと感じるが、やがて兄にとってかけがえのない存在であると気づいていく過程が、ケティの成長と重なっていい。 (は)