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ブライアーヒルの秘密の馬

 

 第二次世界大戦下のイギリス。エマラインは療養のための郊外の施設に収容されていた。元伯爵夫人のお屋敷だったというこの家は、今は病気の子どもたちが療養所だ。そして、エマラインだけが知る秘密。ここの鏡の中には翼のある馬が住んでいるのだ。いつでもやさしいアナは、最近ほとんで起きられなくなってしまい辛い。そんな時、入ってはいけない塀の向こうの庭で、こちらの世界に迷い込んだ翼ある馬フォックスファイアに出会う。馬は翼が折れて飛べなかった。馬の長の手紙から、エマラインはこの馬がブラックホースという恐ろしい馬に追われて危険なことを知る。虹の色を集めれば盾になると知り、エマラインは、フックスファイアを守ろうと決意する。家族から離れ、病に襲われながら生きる戦時下の子どもたちの不穏な日常。その中で、必死に抗うエマラインが抱えていた辛い事実がラスト直前に明らかになる。翼ある馬との交流の生々しさが、不思議な魅力になっている。戦争を背景とした作品であるが、この不穏な空気感は、不安を抱えた全ての子どもたちに共通したものかもしれない。