1902年、クラリーが生まれてまもなく母は死んでしまった。父親はクラリーと兄のピーターをどうしていいかわからずに見ているだけ。コーウォールから来た祖母が急場をしのぎ。召使を手配して帰っていった。祖母の家でもルーパートという二人より年長のいとこを預かっていたのだ。2人は召使と隣家の未亡人ヴェインさんの若干的外れな親切のおかげで、ピーターは神経質、クラリーは明るい子になんとか成長する。父は無関心を貫くだけ。何よりの楽しみは夏にコーンウォールに行って陽気なルーパートと遊ぶ時間だ。だが、成長したピーターは寄宿舎に入らなければならなくなった。寄宿舎が嫌なあまり、汽車から転落してわざと足の大けがをするが、結局1年後には行く羽目になったが、気弱でやさしいサイモンという友人ができ、ルーパートも先輩にいて、なんとか学校に順応する。一方クラリーは学校に行きたくても、近くの花嫁学校もどきの塾しかいけない。サイモンの姉のヴァネッサが、自分の行っている女子校を紹介してくれ、父親の大反対の中、無事に編入試験に合格して優等生となった。おりから第一次世界大戦が勃発。活動的なルーパートは、大学を嫌って友人と共に志願兵になって戦場に向かうが、そこは想像とは全く違う世界だった。そしてルーパートを崇拝するサイモンまでが兵に志願してしまう。ヴァネッサは看護師となるが、クラリーは情報がない中、ともかくも必死で勉強し、群を抜いた優等生として先生たちにオックスフォード受験を勧められる。またしても父は反対。まともな服さえ買ってもらえない生活の中、家庭教師として稼ぎ、ついにオックスフォードに奨学金を得て入学する。ルーバートは、戦場で心を病んで負傷、一時生死不明となり、サイモンは、不器用なままで戦死する。第一次世界大戦という歴史的背景の中で、とりわけクラリーという聡明な少女の成長を描いている。2018年コスタ賞受賞。この戦争は悲惨なものであったが、その後は空爆など市民生活全てが戦場になる時代が来ることも考えるとおそろしい。そして、今の変化の時には何があるのだろうか? とりわけ女性の選択の幅が、さらに広がらんことを。